和五年卯年、皆さんにとってどのような年だったでしょうか。躍動の年にしたいと一年前に書いた私は、今年から運動を心掛けるようになりました。ウサギのようにぴょんぴょん跳ねてスクワットする事もあります。
今年は酸いも甘いも味わったような一年でした。高く飛び跳ねるにも、痛みをこらえ踏ん張ることが必要なのだと、太ももの筋肉疲労に悶えながら一年間を振り返ったところです。。。
さて、令和六年の干支は「甲辰(きのえたつ)・三碧木星(さんぺきもくせい)」の年。雲澤寺にもご縁の深い「龍」の年となります。
「甲」は、十干のはじめに当たります。春を象徴し、物事の始まり、成長や発育、草木が芽吹き生い茂る様子を意味します。
「辰」は草木の形が整い、活力が盛んになった状態、植物が成長して活気に満ち溢れている様子を表します。万物が成長し動きが盛んになる時期とも言われています。また「龍」を意味し、「力強さ」「出世・成功」の象徴で、新たな始まりやチャンスの兆しがあると言われています。
「甲・辰」が合わさった令和六年は、物事が始まり、成功につながるための努力をし、勢いを増しながら成長していく年。実直に努力を積み重ねることで、大きな成果が期待出来る年となりそうです。昇り龍のように、勢いよく活気あふれる年となるように心がけましょう。
古代中国より伝わる九星気学では、今年は「三碧木星」の年に当たります。「震雷の星」と言われ、植物が大地を震わせながら、目が出てくる様子を表します。恐る恐る身を縮め動けずに固まっている状態と、勇気を振り絞って前進する状態の両面を持っています。思いもよらない事態に警戒しつつも、それに対する冷静な判断と行動力が必要な年となるでしょう。
龍を見たことはありますか?
仏教において、龍は教えを守る守護神として信仰されています。お釈迦様がお生まれになった時には、九つの頭をもった龍が涙を流し誕生を喜んだと伝えられています。お釈迦様の誕生日、四月八日の花まつりでお釈迦様に甘茶をかけるのは、龍の涙が由来とされています。
世界でも有数の仏教国であるブータンでは、国旗に龍が大きく描かれています。国旗の龍は、仏教の慈しみと寛容の心を表しているそうです。ブータンは新興国でありながら、国民の九十%以上が幸せと感じていると言われています。
二〇一一年十一月、東日本大震災で被災した福島県の桜丘小学校に、当時「世界一幸せな国」と言われた、ブータンのワンチュク国王と王妃が訪れました。被災して大きな悲しみを抱えた子供たちに、ワンチュク国王はこのようなお話をされました。
「皆さんは龍を見たことがありますか? 私はあります。王妃もありますね。龍は何を食べて大きくなるのか知っていますか? 龍は、経験を食べて大きく成長していくのですよ。私たち一人ひとりの中に、「人格」という名の龍が存在しているのです。その龍は、年を取り経験を食べるほど、強く、大きくなっていきます。人は経験を糧にして、強くなることが出来るのです。そして何よりも大切なことは、自分の龍を鍛えて、きちんとコントロールすることです。この「龍」の話をブータンの子どもたちにする時には、 自分の龍を大切に養いなさい、鍛錬しなさいということを言っています。わがままを抑えることや、感情をコントロールして生きることが大切なのです。」
仏教では、すべての生きとし生けるものに「仏の心」があるといいます。ワンチュク国王は、その「仏の心」を国の象徴である「龍」を用いて、
「生きることは楽しいこともあれば苦しいこともある。でも、人には素敵な心がある。経験を糧にして、心を大切に育てていけば、強く生きていくことができる。」
というメッセージを、被災地の子どもたちの心に響く言葉で語りかけたのだと思います。
「蔵の財よりも身の財すぐれたり、身の財より心の財第一なり、此の御文をご覧あらんよりは心の財をつませ給うべし。」
みなさんの心の龍が、昇り龍のように大きく、強く、イキイキとなる年となるよう、祈念申し上げます。