慶雲興(けいうんおこる)

新年明けてもコロナウイルスは明けることを知らず、めでたいとは素直に喜べない令和三年の幕開けだったかも知れません。このようなご時世だからこそ、仏神への祈りを大切にしていきたいものでございます。

初詣に行くにもやはり人混みが気になる状況下、毎年大勢の参拝者が訪れる寺院や神社では分散参拝が呼びかけられ、新年を迎える前にお詣りをすませ幸せを先取りする「幸先詣(さいさきもうで)」という新しいお詣りの形も生まれました。

さて、令和三年の干支は「辛丑」(かのとうし)です。仏教の発祥地であるインドにおいて、牛は神様の乗りものであり神聖な生き物と言われてきました。また、牛は人の代わりに重い荷物を持って運んでくれたりと、インドに限らず昔から人々の生活を助けてくれる動物です。そのような様子から丑年は「我慢(耐える)」や「発展の前振れ(芽が出る)」を表す年になると言われています。

一方「辛」という字は「草木が枯れ、新しくなろうとしている状態」を指しますが、その反面、上に向かう過程で「つらい」「からい」という意味も持ち合わせています。

状況が急激に好転することは厳しいように思いますが、なかなか前に進まない牛歩のような状況だからこそ、今まで目に止めてこなかったことも自然と見えてくることがあるように思います。新型コロナウイルスをきっかけに、さまざまな場所で新たな取り組みをする方がいます。
テレワークによる働き方の見直し、テイクアウトなど宅配サービスの充実化、オンラインによるLIVE配信、冒頭で紹介したように初詣の見直しまでされるようになりました。

『法華経』の「如来神力品」には
「当知是処 即是道場」(に知るべしのは即ち是れ道場なり)という一説があります。

「是の処」ところは私たちの住んでいる世界を表します。仏教では娑婆世界と言います。ドラマのセリフたまに聞くこともある
「シャバの空気はうまいな~」の「シャバ」はこの仏教の言葉が語源となっています。そもそも娑婆とは古代インド語の「サハー」を音写したもので、日本語に直訳すると「忍土(耐え忍ぶ世界)」という意味になります。

つまりお釈迦様はこの苦しくも耐え忍ばなければならない世界、自分の生活している所・身を置く所が自らを成長させる道場である。
そして、お釈迦様は人の身でありながらこの世界で仏となることが出来た。だからこそ、私たちも同じようにこの世界でこそ仏となることが出来るのだとおっしゃっているのです。

令和三年辛丑、それぞれの道場でもがき・あがき、牛のあゆみの様にゆっくりと確実に前へ進んで参りましょう。
新年を迎えて、兼ねてより計画していた雲澤寺便りの発行に踏み切りました。タイトルは本堂内三十番神さんの上に掲げられている書「慶雲興(けいうんおこる)」

「幸運を運ぶ雲が生ずること。雲が運を運んでくれ、世の中のもの全てがめでたい雰囲気になること。」という意味の雲澤寺の名にふさわしい言葉です。

雲澤寺便りは今のところ年に2回、お盆とお正月の時期に発行を予定しています。お寺での活動はもちろんのこと、少しでも仏教を身近に感じていただけるような内容にしたいと考えています。とはいえ、まだまだ試作段階…「ここの表現はこうした方が良いよ。これってどういう意味?」等々、どうぞご遠慮なくご意見・ご感想をいただければ幸いです。皆さまのお声をもとにより良い寺報を目指していきます。

毎年恒例となっている報恩千部会ですが、先般総代さん並びに、例年ご尽力いただいている清友会の会長さんと協議した結果、本年は総代のみの参加という運びとなりました。毎年心待ちにしてくださっている皆様には、残念なご報告で大変申し訳ありません…

私自身も昨年の挨拶で「これからも盛り上げていきたい」と意気込んで間もなくのこと、断腸の思いであります。

お札・お守りにつきましては、例年どおりお申し込みを受付けており、後日お渡しする予定です。今年の千部会は、皆様の分まで感謝と祈りを込めて、例年以上に力強い読経を捧げていきます。新型ウイルスが終息に向かい心置きなく千部会が執り行える時の為に、新しく構想を練って参ります。

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雲澤寺は、山深くお世辞でもアクセス良好とは言えない場所ではありますが、喧騒を放れゆったりとした時間を過ごすことが出来ます。
緑と静寂に包まれた雲澤寺で、仏様の教えに触れてみてはいかがでしょうか。

気づかい・思いやり・心くばりを大切に。
皆さまのご参詣をお待ちしております。

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